瀬戸内海/中原 那由多
 
海辺を歩く釣り人たちと
夜明け前の風に吹かれる
理屈は波と共に流れて
水平線上のたゆたいを眺めていた


二匹の鯵が弱りゆくを
ただ見つめるばかり
鰡は嫌われてもなお
馴れ合いを求めていた
港を出る船はない
はしゃぐ子供の潔さと
濁った天の川
水路の奥にあるものは
誰がための漂流物


テトラポッドの正義感
存在理由を確かめたのか
テトラポッドへの尊敬
決して揺るがない単調な時間
暇潰しのための余暇は
モラトリアムとジレンマ


帽子を脱いだ
金網の下もまた水の音
狭い中で反響し
それが好きだった


凸凹の岩肌を歩くのは
履き慣れたサンダルでさえ不便で



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