名前を消されて/AKiHiCo
 
無機質で質素な部屋に
名前を消された少年が独り
寝台の上で呼吸を続けていました
硬く沁みだらけの汚れた寝台
その上に横たわっていました

窓を開ければ
前髪が怯えるように揺れ
カーテンが罵声を浴びせます
脆すぎた精神を包む悲しみ
睫の先で踊る陽射しは
水分を含む前に
直線に為るだけでした

虚ろな眸は天井だけを映し
過去の少年の姿の幻影を投影しました

悲鳴にも似た懇願
顔を庇う細い二本の腕
嗚咽に混ざる血液
耐えない悪罵
響く肉を打つ音
骨が砕かれる絶叫
意識を失っても尚
止まない暴力と罵詈
其処に救いは絶無

両手足は麻の紐で寝台に縛られて
[次のページ]
戻る   Point(1)