THE THIRD FLOOR/とうどうせいら
ドーナツ屋さんの3Fまで
えっちらおっちらトレイを運んだ
窓から見える銀の雨脚
お客もいなくてガラガラ
チュロをかじって見下ろすと
一面に咲いた傘の花
横断歩道を流れていく色の洪水
赤や白 黒に青
とてもきれいなラベンダーの傘がひとつ紛れて
百貨店の方に流れていった
ひとつずつ 傘の下は
嬉しいヒトも悲しいヒトもいるんだね
みんな一個ずつ
温かな心臓を抱えて
高校時代は
よく学校をサボって
ここに来ていた
誰にも追われてないのに
誰かに追われてるみたいに
チュロをかじりながら参考書を開いた
誰を責めてる訳でもないんだ
何から逃げてる訳でもないんだ
ただ ちょっと 外の空気を吸いたかっただけ
私は女子高生
3Fまで上って下を見下ろせる位置に少しだけ
くつろげる時間があった
セーラー服の内側で
大人なのか子どもなのか分からない
細い身体が呼吸をしていた
秋雨降る昼前
喉に流し込んだレモンティーは
学校で飲むのとは違う
不思議な味がした
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