ひとつ 飛跡/木立 悟
 





誰もいない家
棄てられた庭
雨の色 雨の色
にぎやか


聞こえぬものを
目で追いながら
痺れに目覚めるからだを知る


階段 縫い針
白と黒の景
昇ることなく落ちることなく
ただ平行に延びる赤い音


静けさが静けさに追いやられ
鏡のなか
朝に群がる鈴の熱


消えかけては現われるもの
消えかけて消えかけて
満ちてゆくもの


ひとつはひとつに在り
白は白にあふれ
陽は陽を消し影を消し
空から 波のように降る光


気がつくとまたあなたはいない
朝をなぞる手の熱いまま
幾度も幾度もわたしに重ね
わたしをわたしに響かせたまま


蛇でもなく鳥でもなく
ひとつの跡が動きつづけ
消えかけながら消えかけながら
熱の源を指さしている














戻る   Point(1)