帰路/山中 烏流
わたしは
きみのいない隣を
どうしても
信じきることができないままに
そっと、
自転車を横たえる
腕時計から
長針の傾く音がして
振り向いたけれど
そこに誰もいないことを
わたしは知っているし
ましてや
いて欲しい誰かがいることを
期待することもない
日付を変えるには
時間が残り過ぎていて
持て余す夜
横たえた自転車の
ペダルを空回りさせては
そんなことを考えた
どうしようもなく
寝苦しくなりそうな夜
行き先の違う
ふたりの帰路の真ん中で
誰もいないことを確かめても
きみが
腕を引くこともない
そんな、帰路
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