マリーナの夏/……とある蛙
コンクリートの石垣と
区分けされた高台の下
淀んだブルーの海に
白いヨットの群れが
白いダンゴムシの死骸のように
そして、漂っていました。
風は海から吹いていたはずなのですが
魚の干物のような匂いをしていたので
僕は思わず顔を背けてしまいました。
あ〜これから
話し合うことがたくさんあるのに
美しい心と
美しい経済
美しい振る舞いと
美しい生活
について
テレビコマーシャルで謳歌された
明るい日本の風景の
残骸だけがまだそこにはありました。
リッチなおいしい生活の残骸が
すべての希望が
すべての絶望のようで
皮肉屋のボートネックのヨットマンは
皆東京に帰ってしまいました。
美しい心と
美しい経済
美しい振る舞いと
美しい生活の残骸を置いたまま
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