夜と風/木立 悟
 





氷の角度の緩いほうから
あけるつもりもなくあけた扉から
かわいた風が入りこみ
指のふくらみのはざまに熱い


奏でること
月から目をそらさずに
奏でること
奏でつづけること


ある日誰かが
金と緑を歩みはじめたとしても
悲しむことはない
悲しむことはない


地が空を覆い
わずかな炎が
風を降らせている
枝に見え隠れする音のなかで


光の上の光が
さらに上へと去ってゆく
空に渦まく
つらなりは 空に渦まく


虫の羽のにおいの夕立
遠くから来て遠くへゆく水
水たまりをつなぐ光の背
銀のにおいを歩み去る背

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