電車ごっこ/吉田ぐんじょう
 

四角い硝子の内側に
ぶわぶわしたひとびとが
等間隔に産み付けられた卵のように
ぎっちりと隙間なく座っている
人間ではないふりをした顔は
電灯に照らされて
生気がないように青白い

各駅停車はのろのろと進み
中吊り広告は猟奇的な事件を
こぞって書き立て
そこだけ人間臭いような雰囲気が漂っていた

窓から見えるのは
夥しい数の信号機とお墓ばかり
一体なんのために生きてきたのだろう
そんなにまでしてどうして生きてゆくのだろうか
わたしも知人も知らない人も
みんな重たい荷物をひっぱりまわして



駅の喫茶店で手紙を書いている
キオスクで買った百円のボ
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