ハウランドストリート三十五番地/狸亭
 

ロンドン リージェントパーク アルバニー通りの僕のホテルと
ハウランドストリートは
市街地図では同じH3の桝目の中で
日曜日の朝早く 僕は出かけた

地下鉄ポーランド駅の裏通りを
茶色の古い建物が道路を挟んで建ち並ぶ
見知らぬ街
人通りの無い石畳の上にはしめやかに雨が降っていて

眼鏡の雫を拭き取ると
そこは一八七二年で
  おお 季節よ 城よ
の天才詩人ランボーその時十八歳
  巷に雨の降るように 僕の心に涙降る
と歌ったヴェルレーヌ二十八歳

二人が共に暮らしたのは
その年の九月から十二月までの
たったの四ヶ月ばかりだったが
あれから一〇〇年以上が過
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