紙魚の眠り/亜樹
図書館へ行くと
いつも
てのひらに
穴が空けばよいのに
と
思う。
エラリー・クイーン
と
京極夏彦
に挟まれながら
金子みすゞ
と
アラン・ポー
に挟まれながら
真新しい紙と
かすかに日焼けした紙が
私を監視している
その前で
私の手に
穴が空けばよいのに、
と。
空いた穴から
ゆっくりと
たくさんの紙魚が
私の体を食い破って
きれいさっぱり
なくしてしまえばいいのに。
と。
紙魚たちは
私のカケラを腹に入れ
何食わぬ顔で
また
各々お気に入りの
ページへはさがって
誰かがそのページを開くまで
ただただ惰眠を貪る
夢のような惰眠を貪る
人気のない図書館で
一生のうちに一度も開かない
数多の本を見つめながら
私はいつも
そんなことを思う。
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