愛鍵/小川 葉
が折れた鍵を
飽きもせずに
いつまでもいじってる
しばらくして
鍵屋さんが来ると
僕らはやっとほっとした
けれど折れてしまった鍵の先端が
思ったよりもひっかかってるみたいで
時間がかかり
近所の人が出てきては
心配そうに話しかけてくれるけど
僕はここにいたくないくらい
とても恥ずかしい気持ちだったのに
妻はそんなこともなく
作り笑いしながら頭を下げていた
唐突に
のりぴー
と僕は言った
眠すぎてそれ以上言葉にできなかったのだ
それでも妻は
やはり、うん、とうなづいて
すべてわかっているようだった
息子が折れた鍵を
飽きもせず
まだ大切そうにい
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