舞台裏/山中 烏流
ただ、じっと
眺めているだけだ
同じように
私の投げ込んだものを
拾い集めて
水ぶくれの目立つ手の平が
それを
並べなおすのを
私は
咎めずに
聞こえないふりをしている
*
彼の発言の芯は
常に
意識の外で
育まれている
彼女はそれを知っていて
常に
常識の内でのみ
その真意を
図ろうとしている
彼は
常識を知りながら
その
外側に向けて
様々を呟いている
彼女の意識は
その境界に
ほとんど
触れない範囲の世界で
育まれてきたのだ、と
誰かが言っていた
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