ついに瀕死/わだち彩子
 
・死んだものばかりが色鮮やかな毛布にくるまっている。あなたは日々、わたしを覆った。すばらしく美しい日々。行い。あなたを被って、丸まって眠りにつくたびにわたしはその死んだものたちに近づいていった。柔いあなたの唇と、花壇を踏みしだいたその革靴。どちらを舐めても終わりの味しかしないなら、わたしたちはもはや瀕死。悄然とするわたしを尚支配しているこの体温だけがどうしようもなく、真理なのだ。

・そうしてわたしは成り下がりの獣になってしまう。
・獣たちの咆哮はあなたには聞こえないでしょう。それが正しいんです。

・これがすべてです。もう恥ずかしいことはいえませんしどこにも行くことはできません。わたしはあなたが死ぬのを待っている。あなたに死ねといわれるのを待っている。もうおわりです。わたしは一度おわります。

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