恋文/
長月 猫
道を行くその途中で
名も知らぬ小さな花に
私は恋してしまった
その場で咲き乱れることなく
その存在を誇示することもなく
ただひっそりと
そこに一輪だけ咲いていた貴女
家路についても
とどまることを知らぬ
この想い
胸が張り裂けぬようにと
筆を執る
でも
私は貴女に送るための
宛先すら知らなかった
だから私は
手紙を火にくべた
立ち昇る白い煙
夜風に吹かれ
闇に溶ける
どうかこの想い
風に乗って貴女へと届け
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