喉がかわいた/竜門勇気
 

ええい
ぎらんぎちゃん
岡山のほうがひかってから
わしは随分歩いたものな
稜線がひどう輝いて
気持ちん悪いぬるい風が長いこと吹いた
ひくい唸るような大音声が
聞こえた後
えろう長いこと
町の断末魔が聞こえたもんじゃ

ほんにどえらいもんを
あれらは落としたに違いないで
日も陰ってしもうて
急にじとりと空気もおかしゅうなった
へえでもわしは家からしばらくん所へ
用事でいっとったけん
なんぼなんでも早よ帰っちゃらにゃあおえん

じきにゃ帰れようが
二つも山越えとる
あの爆弾はゆうたら焼夷弾みちょうな
易しいもんじゃなかろう
どねんなるんかわからんが

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