すぎる水/木立 悟
さらに低いところ
多くの 深い扉
雨は風になり
風は内に入り込む
どんなに狭い隙間からも
風は風に入り込む
似たものの群れが
傘をさしては通りをゆく
暗がりに立つ音
光をそっと押しのける音
雨のなかを流れるものが
幽かに色を伝え来る
閃くものの巨きさに
幾度も幾度も立ちどまりながら
おまえが讃えるあの色は
必要のない色なのだ
花を忘れ 葉を忘れ
光を合成(あわ)せて
静かな容れ物が
はじかれた緑に満ちてゆく
樹を昇る音 落ちる音
境へ境へ鳴りわたる
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