すぎる水/木立 悟
 




水の上の火
空の姿か
底の姿かわからぬまま
ひとり ほどける


風 息 原へ
去るを見る
砕けるを見る
散るを見る


傘をたたむ
遅い夜の色
ひとつやわらかな
人わすれ人


滴をぬぐう手
黒と異の粒
ぬぐいきれない空の針
生まれつづける緋のにおい


よく似たものが歩いてゆく
今もどこかを歩いている
帆の醒める音
醒める音


いつか再び会えるのだろうか
頂きの痛み
曇間の声
眠りの失いまたたき


冬の遊具
鬼火
吹雪が吹雪を追い
街をすぎる


多くの色が流れ落ちてゆく
低いところ

[次のページ]
戻る   Point(8)