スーパーへ行く人/吉田ぐんじょう
います
と答えた
百年後の世界に思いを馳せながら
たぷんとしたやつをひとつ籠へ入れる
レジ打ちのひとの横顔は
びっくりするほどあおじろい
小銭を出しながらいつも思う
このひとは
このスーパーの中に住んでいて
長いこと外へ出ていないのかもしれない
カップラーメンや乾物に囲まれて
案外安らかに眠っているのかもしれない
と
会計を済ませて表へ出ると
もうすっかり暗くなっている
突っかけてきたビーチサンダルは
昼間の熱がまだ残っているアスファルトの上で
ぱすぱすと心もとない音を立てた
心には未だ
すうすうと風が通り抜けていて
とても静かだ
ぶら下げたマイバッグの中には
死んだものばかり詰まっていて
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