びわの木/……とある蛙
 
生まれた家の前 
坂の途中に
おそろしく大きな石の門が
その中に白い木造洋館

年老いた医者のいる医院で
診察室の窓枠は
白塗り木の窓枠
窓の外には枇杷の木が…
枇杷の葉が風に揺れていた。

患者のほとんどが底の街の子供たちで
窓の外 枇杷の木が……
枇杷の葉が風に揺れていて
それを眺めながら
皆、目の縁に涙を浮かべている。

決して注射はしない医者だが
親はいつも注射を持ち出し、子供を脅す
注射と苦い粉薬は
子供たちの恐怖だ。

枇杷の木は優しく子供を見つめ
子供は目の縁で涙をこらえながら
枇杷の木を眺めている
シロップの薬がもらえることを祈って。

すべてがモノクロームだったような気がする。


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