それでも僕らはきっと祈りのために/ホロウ・シカエルボク
かんらかんらと笑いながら
友だちの靴をひろっていずこかへ飛んで行った
巣にでも使うのだろうか
ブリキのような身体に
ぬくもりは必要だろうか
僕らはカラスの背中を見つめる
もちろん果てしなく足を動かしながら
カラスはだんだん小さくなって
やがて小さな点になったが
そのあとも不自然なくらい
僕らの目には見え続けていた
下の方からアヴェ・マリアが聞こえる
信心深いお嬢さんが
そこらへんに居るらしい
彼女の歌声は大変綺麗だけど
風景にはいささか場違いなように思える
この場所に祈りがあるなんて誰も思っていないのだから
のぼりながら
転げ落ちた
友だちの名前を
僕らは考えた
だけど
誰にも
彼がどんな名前だったのか
思い出すことは
ついに出来なかったのだ
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