梅雨明け前の記憶/
照留 セレン
朝からの風の匂いで
前線の真下にいると気付いたところ
一晩じゅう置き去りにした鍋からは
酸っぱい匂い、残る悲しみ
部屋干しの洗濯物に引っかかる
濡れた髪の毛
湿ったタオル
鉛筆で黒板の知識書き写す
濡れたノートを破らぬように
紫陽花はもう色あせた
向日葵はもう項垂れた
梅雨は明けない
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