風に吹かれて/ホロウ・シカエルボク
 


淫らな夜に唾を吐きながら飛び惑う鳥だった、嘔吐のように溢れ出る鳴声のせいでいつでも水が欲しくてたまらなかった、カットされた景色のような電信柱の影をかすめながらうち捨てられた巨大なマンションの最上階のベランダに旋回を繰り返しながら降りてゆく…割れたガラスで足を傷つけぬようにしなければ、寝ているうちに血を流していたなんて先に目覚めるだろう女に何と思われるか判らない。

派手に破壊された窓から中に忍び込む、光源が何も無くとも充分に明るい最上階だ、数十年は前のささやかな暮らしの名残が時を口ずさむように白くくすんでいる…首を吊って死んだアイドルのグラビアが「どこに行けばいいのかしら」というような
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