作文/生田
 
 キリキリと身をよじり、昇っていく火の玉を見ていた。咲くべき紺碧の夜空に呑みこまれた花火を見ていた。立ち尽くしたあぜ道をすぎる風は焼けた肌を撫ぜ、髪を揺らし素知らぬ素振りで消えていく。空を仰ぎ見ようと、風に飛ばされぬように、と押さえた手のひらが髪をかすめる。向日葵の下か、蛍の川原か、何処かに置いてきた藁の帽子。夏は、そんな忘れたところに集成していた。
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