邂逅/熊野とろろ
 
ていった
男が易者なのか当時メディアで取り上げられていた
スピリチュアル・カウンセラーの類いなのか
判らなかったが おそらくどちらにも該当しないだろう
ただのふらふらしているアル中の男だ
よくいるアル中の戯れ言に過ぎない
しかしおれは男の言葉がこびりついて離れなかった



三年の年月が経過した
二十二歳になっていた
自分なりに精を尽くして生きてきたつもりでいたが
ことごとくが空回りしだしていた
斯くしてジリ貧の生活をしている
メンソールなど高価で吸えない
180円のエコーを吸っている
花火の薫りがする 美味いわけがない
朝起きて途端に吐気を催すのはこいつの所為
身体的にも決して健康的とは言えない
それでもアルコールは一切含まない
どうやらダメになってしまう体質だと判ったからだ
おれは今日も歩き これからも毎日歩くだろう
あの男の言う二人の人間にはまだ出会っていないはずだ
鉛の男の言葉を反芻する
しかし依り掛かって生きていても良いわけがない
未だ殺意はあてなく浮遊するまま
確かにおれの周りに在る





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