頁/nonya
七月の雷鳴は
緊張性頭痛の彼方に遠ざかり
かいつまんだ夏の
漂着物だけが胸を塞いでいる
八月の岩壁から
ひ弱な海鳥はまだ飛び立とうとはせず
なまあたたかい波が
何度でも砂浜を嘲笑っていく
わりとよくある物語だ
酔わなければ読めない代物だ
読み終えることができずに
いつまでも頁を繰ってしまう
僕はまだ愚かな読者だ
忘れることは難しくて呆気ない
きっと遠くないある日の昼下がり
僕は今手にしている物語を
児童公園のゴミ箱に捨てたことも忘れて
本屋にも図書館にも行かずに
いつの間にか手に入れた
新しい物語の頁を繰っていることだろう
その物
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