はちがつがこわい/木屋 亞万
八月が恐い
僕は七月に話しかけていたのに
七月は知らぬ間に去っていた
八月には入道雲が空を仕切る
僕は彼らの無遠慮さが嫌いだ
態度がでかくて、真っ白で、どことなく冷たい
全身が真っ白の人間は
結婚式以外の場では皆おそろしい
「この辺に置いてあった核兵器知らない?」
「え、知らない。最後に見たのは、いつよ」
「そういえば、あれだ。あのとき見つからないように慌てて隠して」
振り返っても七月はどこかに逃げてしまって、いない
七月に開かれた海は八月に汚された
魚眼が涙を流しても誰も気付かないと人間は思っていたらしい
部屋をひっくり返すと
天井を突き破らんばかりのミサイ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)