夜の拳 /
服部 剛
誰もいない家の
ベッドに一人横たわり
イヤフォンを耳に入れ
励ますような
君の唄声を聴いていた
窓から吹き込む夜風に
カレンダーはざわめいて
捲(めく)れる暦の隙間から
無数の数字が、零(こぼ)れ落ちていた
やがて目覚まし時計が鳴り
僕は、身を起こす。
手の平を握りしめて
昨日迄の弱い自分の姿を砕くように
時間を、止めた
スタンドの灯(ひ)に照らされた、夜の拳。
戻る
編
削
Point
(5)