回転する世界+忘却/熊野とろろ
 

地球儀を回転させまして
わたしは20世紀を忘れました

太平洋がひたすら鼻につきました
なのでイタリアのブーツを履いて
試みに外に飛び出してみたのです

残念なことにこの通りはローマに続きません
日雇い労働者が集うコインランドリーに辿り着くのみです
駅前の交差点で何百人もの青ざめた顔を見たとき
わたしは自分の名前も思い出せなくなりました

死人のデモ行進に参加しているのです
回転する地球儀の上で
わたしたちは三半規管が揺れているのです
ずうっとまえにもこんなことがあったような気がします
わたしはことごとくを思い出せずにいました

低い石垣に坐る猫背の浮浪者の
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