ブルース・スケール/熊野とろろ
 
座椅子に凭れかかり
1日の疲労を改めて我が身に回顧させる
   ここはどこ?
   アタシはだあれ?

左手が6つの弦を
 押さえ
  移動する
右手は弦を弾く
  振るえ
    響く


ブルースは日本語に直訳すると
〈憂う歌〉となるそうだ
かつてアメリカの黒人たちが
みずからの不幸と悲しみを
陽気なリズムとコードで唄った

長くギターを弾いていると
手癖というものが習慣により出来てしまう
帰宅し坐り込んだぼくは
無意識にギターを弾いていた

ブルース・スケールをなぞり
  チョーキング
    ハンマリング
       プリング
  Aの循環コード

 この国で生まれたぼくが
 2009年を生きるぼくが
 差別をうけたことのないぼくが
 日曜日に教会で祈ることのないぼくが
 盲目に奏でるブルース・スケール

ぼくにも憂いというものがあるのなら
その感情はこの旋律に乗って一体どこにいくのだろう
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