輪郭/木屋 亞万
かねてからピカソの絵が好きだったので
自分の描いたものが、尊敬する絵の近くまで来ているように思えて喜んだ
最後に腰骨のでっぱりの脇にヘソをぐりぐりと描いて、チョークを置いた
そして警察がしたのと同じようにポラロイドで遺体現場を撮影した
その写真は男の最初の芸術作品として世に発表されることとなった
それ以後、男は一貫して死体の肢体をその輪郭の中に再現し続けた
その描き方が肢体を立体的に描くのではなく、
奥行きを持って、地中に埋めていくように描き込まれていくことから
彼は死体埋葬画家と呼ばれるようになった
男は今日もチョークを握りしめ
死んだ女の不満に耳を傾けては、事件現場を転々としている
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