犬(完全版)/鈴木まみどり
 
液が流れ星のように
言葉の中心を駆け抜けるのを見ていた

生まれた子は
丸型に入れれば 丸に
もみの木型に入れれば もみの木になるような子どもだった

価値は
違う次元へ行くことばかり考えていて
(五次元空間やら六次元空間やらで遊んでいる星、のこと/ばかり、)
価値観の暴挙を聞いても
顔色を変えない
のだった
その気持ちに名前をつけるのを
逡巡していた



切断できない
だから関節を茹でちゃう
そうすれば包丁がすっと入る
その包丁が
わたしの言葉だった
だって
名づけられる?
あの子が乗っている自転車の色…

手をついて足四本
それはあなたに忠誠を誓うことに等しく
それでいて
あなたの命を握っている
/も同然
わたしが考えるのを止めたら
あなた
はどうするのでしょう



彼らは人間のなかに
再会を求めている




(現代詩手帖2009年8月号 選外佳作)

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