かぜごゑ/
吉田ぐんじょう
した
風邪よっかめ・午後
帰宅してトローチを舐めようと封を破ると
それはトローチではなくて笛ラムネだった
所在ないので
口をとんがらかして咥えて
ぴゅうぴゅうと音を出してみる
それは
高層ビルの路地裏を吹き抜けてゆくような音で
窓の外では
風邪に罹る前に干した洗濯物が
曇り空にひるがえっていて
ああなんだかさみしいなあ
布団の中からは汗と垢のまじりあった
野蛮なにおいがする
誰かやさしい人が来て
抱いてくれやしないだろうか
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