煮物/千波 一也
 

煮物の味は
素朴であるけれど
素朴であるがゆえにこそ
むずかしくて
奥深い

ごらんなさい、
たけのこと
さといもと
しいたけと
なんの疑いもなく
一緒くた


わたしは
素朴に生きたいけれど
素朴に生きるということは
言葉でいうほど
たやすくない

あこがれも
とまどいも
いつわりも
どろどろになって
一緒くた


箸をほんのり湿らせる
やさしい光りに
煮物を嗅いで
わたしは
優しく
優しさをはむ







戻る   Point(6)