ドア、閉まります/吉田ぐんじょう
しながらシンナーを吸っている
車内は静かで
みんなねむっているんだろうか
大人のひとたちが
わたしたちの起きているときはねむっていて
わたしたちのねむっているときに
起きているのはなぜなのだろうか
考えるべきことはたくさんあるのに
わたしはどんどん大人になってしまう
自分が子供だったということも
そのうちわすれてしまうんだろう
少し寒い
とっておいた冷凍ミカンをはんかちから出して
大切に食べる
長い旅になりそうだ
電車はおもちゃのようにかたかた揺れながら
青空も星空も切り裂いて
わたしたちを
まだ誰も知らない
どこか遠い場所へと運んでゆく
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