ムササビとマタタビ/木屋 亞万
も猫がマタタビを嗅いで、セックスもするように、俺たちも貪欲に快楽にしゃぶりついていただろうか」
男は日本酒の熱燗に切り替えて、なおもこう続けた。
「カマキリのオスはセックスをした後、自らの身を餌として差し出したりしないそうだ。メスがオスより大きくて、動くものに襲い掛かる習性があるから間違って食べてしまうだけらしい。セックスをした後、オスは食われないように全力で逃げるのかもしれない。ことを終えた後のあの脱力状態で、全力疾走で逃げるなんて人間の俺には考えられない所業だ。人間でよかったと思うのは、人間に寝具があることくらいだ」
そういうと男は芋焼酎のロックを飲み干した。
お開きの雰囲気が近
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