再会〜それから/小川 葉
 

けど旅に出るには大きくなりすぎた
家族というものの前を
極めて厳しい日々が過ぎていく
そんな中
息子が日々何度も刷りなおしながら
一枚一枚成長していくのが
唯一の救いだった

自動販売機になった君と
輪転機になった僕は
思えば遠くへ来たもんだと
かつて青春の頃
君と僕が登ったあの山の頂上で
僕らが暮らす町を見下ろして歌っていた
あの歌を
機械のからだで必死に思い出している
僕はインクの涙を
君はコーヒーの涙を
流しながら

塩辛くて透明な
君と僕の涙は
かつて同じ水であったはずなのに
 
 
戻る   Point(1)