輪廻/コノハナ
 

少年は行くあてもなくふらふらと街を彷徨う。

初夏の陽射しの中、陽炎が揺らぐ。
気づけば辺りに人はなく、見知らぬ坂を登っている。
街のざわめきも、あれほどうるさい蝉の鳴き声も聞こえない。

不自然なほど静かだ。

やがて坂を登りきる。
すると、

『和宮神社』

正面に鳥居。聞いたことのない社名が鳥居わきの石塔に刻んであある。
そしていずれも、長年雨風にさらされた形跡がある。
新しく建てられたものではない。

「幽世か」

かくりよ。
現世とあの世の間の空間。
少年はそれに遭いやすい気質だ。
故に珍しくもない事で、少年は慌てることもなく気にすることも
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