「B-29は頭上を通り過ぎていきました。」〜祖母の記憶/夏嶋 真子
 
い私のお姉さん。)

再び目を開けたとき、B-29は頭上を通り過ぎていきました。


死神が通り過ぎると姉は一目散に駆け寄ってきて
「ごめんねぇ、ごめんねぇ。」
と私を抱き寄せて泣きました。
私は姉にすがりつくように、慰めるように、
許すように泣きました。




その夜、町は、私と同じ年頃で同じ名前の女教師が
国民学校で空襲に巻き込まれた、
というニュースで持ちきりでした。

生きている私と
機関砲で打ち抜かれた先生。
同じ名前の私たち。

私の頭上を通り過ぎ、もう一人の私を打ち抜いた死神を思うとき
私の戦争は決して終わりはしないのです。







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