たまねぎ/かんな
だった
七センチの穴を通ってしまうものは
はじかれる
通らずに穴にはまったのだけが
エリートとして東大にいくんさ
父が冗談まじりに言うので
東大っていっても、スーパーだし
結局、食べるのは人間でしょ
とつい私が言ってしまう
たまねぎのしあわせってなんだろうと
思考が跳ねる
きっと
たまねぎの心情には
関係のないところで
わたしの選別はすすんでいる
こうしてついた土を払って撫でてやる
そうやってみれば
気まぐれに
たまねぎを慈しむ
わたしがいるだけで
夏らしい陽がさして
ひたいに汗がにじみはじめると
肩や腰に
やんわりとした傷みもはしる
幼い頃は
毎日農作業をする父の姿をみてきた
いつからか
実家から
父から目を背けて
見失ったものがあったかもしれない
目に落ちる汗をぬぐう
それはきっと
このたまねぎだ
戻る 編 削 Point(5)