水位の上昇/e.mei
て、いつもよりたくさんのわたしをみせた わたし思ってないよ 救ってあげようだなんて思ってもいない
電気をつけなさい 母の声がする歩いてくる母に踏まれるわたし わたしはそんなにいい気がしない
つけるわよ 母は感情を剥き出した獣のような声で呟いた おはよう 何よ何もないじゃない 母はたくさんのわたしにまとわりつかれながら部屋を出ていった ひとりのわたしが眠そうな顔でわたしを見つめる
わたしを 見つめる
(わたしはわたしに話しかける あなたは少し違う あなたはわたし? わたしはあなた? わたしとはもう付き合いが長いのだろうか 彼女はわたしをもっていた)
わたしはわたしの思い出の断片を集めることをしてはいけない わたしはわたしと一般的な話題をしてはいけない 三日後にはわたしはまた増殖しているかもしれない わたしは上をむきただ待ち続ける 上昇してくるわたしたちを
それまでは何も言わない
ラストシーンは自然にやってくるものだから
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