ファクシミリ1_金糸雀/
梶谷あや子
帰ったら
ご飯を食べようね
バス停前のあの本屋
きっとこの頃は
思い過ごしているのだろう
傘の下のせまい
湿った毛色がとろりと風邪をひく
濃いすみれのようなのは
浮ついた午前のまっくらさ
たゆんだ車窓が
縮こまって
そこを君の幽霊がうずくまったり
走ったりして
とても青い
青くて弱い肌をしてるんだ
苦手な数式
解いてみせて
何も聞こえなくとも
幸せでとろけるかと思うのに
空をもう随分見ていない
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