土曜、午後/ゆでたまご
煙草に火をつけ一口目、輪っかができた。
たまにやろうとしてもできないので、珍しくて目で追う。
ゆるゆると大きく広がりながら登っていく輪っかが「出口」のように思えて、形を壊さないようにゆっくりと左手を通してみる。そして、そっと手を広げてみる。
このどうしようもなく行き詰まっている私には、そんなことをして時間をやり過ごすしかなかった。
出口を抜けるイメージ。
長いトンネルを通り抜けた時の眩しい白い光を思い出す。
昼間、風が通るのを見た。
アパートに囲まれた暗い公園で、木を大きく揺らして通り過ぎていった。
公園の主のようなどっしりと大きな木が揺られたから、葉の擦れる音はとても大き
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