俺の中にはもう誰も居ない -ZOMBIE-/ホロウ・シカエルボク
 
かな風、真白な雲、そんなものに
窓辺に釘をやたらに打ちつけて、ひび割れてゆくプラスティックの最期を眺めていた
俺の中にはもう誰も居ない、不詳の夜にみんな死に絶えてしまった
電話帳でも住所録でも開けて確かめてみるがいい、そこに書かれていたはずの名前はすべて消し去られた
俺はもはや死体が詰め込まれた薄皮の袋に過ぎない
肌が壊れてしまったのは飲み込んできたもののせい
口が歪んでしまったのは隠してきた言葉のせい
爪が尖ってしまったのは床に刺した憎しみのせいさ
俺の中にはもう誰も居ない、取り消し自由だ、もうもはやすべて
谷から投げ捨てるみたいに万事塗り変えてしまおう

[次のページ]
戻る   Point(3)