顎なし鱒夫と俺物語/e.mei
 
に入り、絶望の果てで俺は永遠を探した。深紅の光は稲妻の頭を照らし、行き来する女たちは優しい笑みを浮かべる。見知らぬ女に抜かれれば良い。沈む陽の死を海に落として、絶え間なく嘆く亡霊たちに守られて。その最後の稲妻を抜けば光が、光が世界を支配するのではないだろうか。静かな店のなか、まだ永遠は見つからない。
 輝きのなかで、稲妻は微笑んでいる。爽やかな風が稲妻を揺らす。(飛んでゆけば良いものを)俺の隣にようやく女が座る。今日は池からの侵略者ときたもんだ。鏡だ、鏡を持って来い。稲妻の光さえ薄れる、霧に包まれた蛙の声。「麗美です」名前負けした女は座ってすぐに煙草に手をやる。客は俺なのに。客は俺なのにだ!

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