顎なし鱒夫と俺物語/e.mei
何処かから鳴り響く終末の歌。少し眠い。「パパはどうしたですか?」俺が永遠への扉を開こうとしていた時、ようやくタラが俺のことを訊いた。「夜遊びかしらね」サザエ即答。夜遊びか、夜遊び。ふふ。「最低……」ワカメの呟きが聞こえる。今はただ薄い窓が憎い。精霊がまた一歩近づいてくる、祈ろうか、マリア。サザエよ、サザエ、今すぐ飛び出しておまえのその髪をひとつちぎってやりたい。ああ、凍える夜に俺は最低と、最低と罵られ!
水が流れているのは川です。木がいっぱいなのは森です。蟹は横歩きです。あはは、あはあは。涙がとまらない。泣きながら俺は俺を抱きしめた、眠りはまださめないのか。これは夢だろう、俺はまだ未婚じゃない
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