文月二十三日/志賀羽音
っちらおっちらと水掻きを広げて掻いている。)目薬は僕を労りたいのか、いたぶりたいのか分からない。最近よく聞くツンデレだろうか。携帯電話でも、ツンデレと出てくる世の中だ。目薬がツンデレでも可笑しくはないだろう。眼球が潤うと、僕自身、喉が渇いていることに気がついた。僕よりも小さい冷蔵庫には、発泡酒と富士山の水とエビアンが入っていた。発泡酒は却下。あれはビールじゃあない。富士山の水は富士山の水なんて主張しない。因ってエビアンにする。エビアンは僕が裏切らない限り裏切らないから好きだ。(小さい頃に飼っていた犬を思い出した。その犬は僕が好きで、僕も好きだった。しかしその犬は首輪を外してどこかへ行ってしまった。
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