夏をかう/木屋 亞万
 
裏庭で夏が入道雲を浮かべている
昔ながらの夏だから雲にも貫禄が出てきた
そろそろ伸び過ぎた部分を刈らなくてはならない

夏を見るたび、思い出すことがある

昔はどこも夏しか飼わなかった
父は私が幼いとき、
「秋や冬は乱暴過ぎて手に負えない
それに春はかわいいが繊細で育てにくい
すぐに死んでしまうよ」と言っていた

そんな時代も遠く過ぎて、さまざまな季節が人懐っこくなって
一般家庭の裏庭に飼われるようになった
昔は家庭で育てにくかった冬型の気圧配置も
品種改良を重ねてずいぶん間抜けな体型になった
秋の紅葉刈りのバリエーションも増え、
トイカット紅葉が現在の主流となっ
[次のページ]
戻る   Point(4)