旅人/BOC
空がまだ黒一色だったころ
ぼくは静かにいきていた
窓から見えるのは 絶望ばかりで
希望は何十年か前に 旅人が見たのが最後だという
最初から希望だったものなどない
最初は絶望なんてものは何ひとつなかったのだと 旅人は言う
砂に埋もれて 死にゆく旅人の無念を
誰が果たすことができようか
誰が愛することができようか
空がまだ黒一色だったころ
ぼくは静かに眺めていた
希望が絶望に変わる 間 を
そして絶望が希望に変わる 間 を
最初から希望だったものなどない
最初から絶望なんてものは何ひとつなかった
生み出したのは
人のこころの弱さであり 醜さである
強さであり 美しさである
今は亡き
旅人よ
戻る 編 削 Point(2)