ベネズエラの夜に、/e.mei
死の海と地獄の青狸にかこまれた君の純粋な瞳がホセを焼いたのだろう。酒に溺れたホセの汚れた瞳はゆっくり落ちていくグラスすら追わない。リベラがグラスを取り、グラスを天へと捧げる。ホセの白髪は風に流されて地獄へと繋がる。死の光に蝕まれた足音はすぐそこまできているのだ。「夜までには逃げなさい」リベラが少年に呟いたとき、俺はただ、天井を見上げ、何も語らず、泣いた。
*
(……ホセが近づいてくる)
酔って暴れたからかひどい怠さが体を支配していて俺は足の爪先から鼻の穴まで動かすこともできない状態にあった。雪があがったあとのぬかるんだ道を鼻歌を歌いながら歩いてくるホセ。ノックもせずに部屋に
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