ベネズエラの夜に、/e.mei
 
、誰も彼に愛をあたえることはなかった。ホセは影、太陽にあたることはなく、昼には一緒に消える存在。リベラの泉で流れるリベラは音もなく底を消し、ホセを永遠に抱きしめる。生きているものが何一つ見えなくなったとしても、彼は歌うことをやめない、それは悲しみの歌だ。影を前に歩かせて、夢を見るその影は好きだった少年に別れを告げる。さようなら。さようなら。
 愛してた。
 空が泣きだした。俺たちも泣いている。ベネズエラの風は長い間ホセに口づけをして消えた。酒場ではホセは何も言わずに、ただ出されたリベラを飲んでいた。笑い声が喉から聞こえる。俺たちは何も言わずにリベラを口にする。口を閉じて笑い声を消すがリベラはやはり笑っている。月と悲しみに背いてホセはようやく力なく笑う。窓側の席に座っていた夫人が愛の歌を歌っていて、それはお世辞にも俺たちには良いとは思えなかったが、ホセは、「良い歌だ」と呟き、
またかすかに、
 笑った。……
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